『群系』 (文芸誌)ホームページ
「群系」28号(12月発行)の原稿募集要項 と《特集》について
2011.9.25.記 青字部分は、今回追加
『群系』第28号の《特集》について
震災・戦争と文学 (アピール文) 原稿は10月末締切(右サイト参照)
「群系」28号(次号)の特集は、前からお示しているように、今回27号の続編≠ニなる、「震災・戦争と文学」(仮題)です。本来、次号は、いままでの特集「百年の日本文学」(4回シリーズ)の最終回として、1967〜2000年≠フ文学作品を対象として、現代(21世紀)に続く日本の近代文学の一応の結末としての現代文学を扱う予定でしたが、今回の「東日本大震災」があって、それをそのままに扱うわけにはいかなくなりました。この震災は、近代日本の、あるいは日本人の根幹を問い正すような出来事でした(この出来事を無視したら、何が大事なのか、がわからなくなる)。
テーマを考える資料として、とりあえず、文芸誌の特集(というものがあるか)、図書館で確認したところ、3・11を特集として取り上げたのは、「群像」5月号くらいでした(追加として、「文学界」「文芸思潮」誌―後述)も。しかも、特集≠ニいうより、「東日本大震災 特別寄稿」とそこにはあって、二人の名前があっただけでした(赤坂憲雄と高橋克彦)。要するに、メディアの一つとしては、文芸誌はこの段階では「特集」するまでは考えなかった、ということでしょう(→しかし、それからじっくり個々の作家も表現を発表してきました―。ここでは、あとで、「すばる」8月号を紹介します)。また、「文学界」6月号には、辺見庸の詩篇「眼の海―わたしの死者たちに」掲載。同誌8月号に、震災に関しての「特別対談 菅原文太×丸山健二」を掲載。*菅原氏は仙台出身、丸山氏は長野県出身・在住だが、青年時代は仙台の伝播専門学校で過ごした)。
ふたりの寄稿者は、ともに「東北」に関係ある、作家・高橋克彦(岩手在住・2p)と、東北学≠打ち立てた、赤坂憲雄(14p)でした。赤坂は特に、津波(昔は海嘯≠ニいわれたそうな)の、民俗的な捉え方として柳田国男を引きながら、海辺の民の伝承を語り、さらに災厄・犠牲≠フ話で、戦後のゴジラ、ナウシカ(「風の谷のナウシカ」)の意味を問うていました(「海のかなたより訪れしもの、汝の名は」)。
赤坂らのは、エッセイ(論考)でしたが、今回の東北の被害についての文学的実践は、8月18日(木)「群系掲示版」拙文紹介のように、古川日出男「馬たちよ、それでも光は無垢で」(「新潮」2011年7月号)などに求めるべきなのでしょうか。いわば、「小説」にあらざる文芸、「私」が主人公たる現地報告≠ナしたが)。
その古川を紹介していたのは、「3・11」と「その後」の小説≠ニいう論文(陣野俊史・「すばる」8月号の)でしたが、そこで、陣野が強調していたのは、拙文のまとめにあるように、「今度の震災・核は、アナロジーとして、かつての戦争・原爆と対比しうる、また、メタファーとして書きうる、そして、心ある作家は自らの感性による伝統的手法で、それらを描いてきた。しかし、ここで問われているのは、これら「小説」(フィクション)を超える、書き方のありようだ。ルポルタージュといいうのか、現地報告といおうか。この文学の形式、可能性をも問うものとして、問題は提起されている」―。
陣野は、表現の形式にまで言及していますが、ここで、われわれが注目したいのは、冒頭の、「今度の震災・核は、アナロジーとして、かつての戦争・原爆と対比しうる、また、メタファーとして書きうる」といっているところです。
実際、その号に同時掲載されていたのは、刊行記念企画 コレクション『戦争×文学』を読む≠ニ題された、若手作家6人による、読後感想≠フ文章でした。(むろん、「すばる」は集英社刊であり、刊行≠ウれる、コレクション『戦争×文学』の全集は、毎度この「板」で紹介済みの同社の全集です)。(今度の日曜、この企画の記念講演会が、全集編集委員らによるシンポジウムが早稲田大隈講堂であり、当方も同人と聴きに行く予定です.。川村湊らが出ますが、司会は、その陣野俊史のようです)。→行きました。参考になりまして、知らない戦争文学作品など、あらためて知りました。
そこには、この戦争どころか、学園紛争も知らない世代が、しかし、実にやわらかな、人間的な感性で、戦争を、そして、震災をみつめ、語っている姿が見られました。
刊行記念企画 コレクション『戦争×文学』を読む
ハムレット一九四五〜井上ひさし「少年口伝隊一九四五」 安達千夏(作家。65年生)
光栄≠ゥらの帰還 島尾敏雄「出発は遂に訪れず」 谷崎由依(作家。78年生)
戦争のこと 梅崎春生「ルネタの少年兵」 西加奈子(作家。77年生)
残存された者の態度 川上宗薫「残存者」 穂田川洋山(作家。75年生)
人が生きることは必ず他の人から祝福される 吉村昭「手首の記憶」 山崎ナオコーラ(作家。78年生)
忘れないという戦い 歌人 竹山広 斉藤斎藤(歌人。72年生)
「山崎ナオコーラ」や「斉藤斎藤」など、ペンネームもふざけている、と思ったが、それはみかけだけ。ナオコーラは「人のセックスを笑うな」という小説(これも一見ふざけたタイトルだが)でデビューしたのだが、その内実は、真面目だと思った。震災で、自分はどうあるべきか、真剣に考え、そして、戦争文学も、震災と同じ問題意識で向かおうとしている(ナオコーラは、なんと、40万円の寄付をしているそうな)。
取り上げている作家のうち、島尾敏雄、梅崎春生はまことの戦争作家だが、吉村昭はともかく、井上ひさし、川上宗薫は意外でもある(しかし、さるべきことでもある)。竹山広は初めて聞きます。
ここで、提案ですが、今度の28号(次号)の特集は、こうした幅広い作家(あるいは非作家・文学者)でいいのではないでしょうか。戦争、あるいは災害という事象は、人間eとって(あるいは、民族・国家にとって)のっぴきならない、そのことだけで、十分、「ひょうげん」に値します。とにかく「表された・現された」というだけで、事象へとっかかるあしがかりなのですから、特集テーマの対象は、分野・ジャンル、書いた人、機関・組織にかかわらない、でいいと思います。よって、過去の関東大震災と今度の震災を比較してもいいし(ま、文学の場に限る方がいいが)、戦争と災害を比較してもいいと思います。究極、日本人とは、国家とは、民族とは、(と大上段ですが)、そういう問いかけがあれば、ご名答だと思います。 永野悟
文芸誌の「震災特集」のなかで、論壇誌なみの特集を組んだのは、「文芸思潮」誌夏号(アジア文化社 1,260円)で、特集 東日本大震災≠ニして、巻頭に40pもの震災現地の写真特集を一挙掲載、その後、「座談会 大震災と文学」45p分を掲出しています(出席者:井口時男・富岡幸一郎・菊田均/司会五十嵐勉編集長)。→下段にURL
また、先の「すばる」誌8月号には、は、3・11に関しての出色のエッセイ、「春を恨むことはできるか」(池澤夏樹)も掲載されていましたが、必読といえるでしょう。
(これは、『春を恨んだりはしない-震災をめぐって考えたこと』中央論新社、として本にまとまったようです。その経緯が、「東京新聞」9月20日夕刊に筆者インタビューとしてでていました)。記事右サイト下 に掲出)
(「群系掲示板」 2011年 9月 9日(金) 既出 9月 25日(日)追記) |
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さらに、関東大震災については、田山花袋に「東京震災記 」(河出文庫) があり、吉村昭にも「関東大震災」(文春文庫)がある(さらに、吉村には、「三陸海岸大津波(文春文庫)がもある)。
作家やメディアの果たした役割など、上記座談会末尾で、井口氏などの発言は参考になります。
《28号特集関連書籍・雑誌》

「文芸思潮」誌のサイト 『思想としての3・11』
(座談会の録画も見られます。YOU TUBU) 河出書房新社 1,600円(税別)
『群系』第28号
原稿募集要項
掲載料金、配布冊数など、基本的なところは、この数年変わりません。
〈読書ノート〉など、1pからでも歓迎です。複数投稿は、3部まで。
原稿種類 評論・研究、創作・小品、エッセイ、詩(短歌・俳句は除く)、コラム(1ページ。半ページ囲み)など。音楽論・絵画論、評伝、メディア論、漫画論なども歓迎。複数投稿可。
枚 数 基本的には自由(1ページは25字詰め×23行×2段=1,150字)。
1ページ目にはタイトル分25字×8行×2段=400字(1頁物などは、25字×5行×1段=125字)が入ります。それを除いて計算ください。なお,《読書ノート》《音楽ノート》《映画ノート》(各1〜2頁くらい)や、政治的・社会的テーマのコラムも募集(1〜4ページくらい)。気楽に投稿ください。
特集企画
震災・戦争と文学 (副題 未定)
今回は、3・11の東日本の大震災を受けて、戦争と震災をからめてテーマにしていきます。今までの「百年の日本文学」とは違う特別企となり、特に時を規定しません。「震災」も「戦争」も、時空間を超えて論じたり、逆に、一つの時代の一つの作品に絞って作品論に仕上げていただいてもかまいません(これは主流として歓迎)。→(左サイト参照)「群系掲示板」9/9投稿分、参照。
当初の企画、「百年の日本文学」の第4回(1967〜2000年)は、その次の号に繰り下げます。
掲載費 1. 手書きの場合:1ページ3,500円(コピー原稿を郵送ください。黒猫メールも可)
2. 電子メール添付の場合:1ページ 3,000円(WORDで)。 もしくは短いものなら、「メール板」に直接書き込み、でも可です)。
なお、ワープロの場合、当方のパソコンで開けないので、編集作業ができません。群系の体裁とおりにしていただければ幸いです(25字詰め×23行×2段 タイトル部分必要分とってください)。
ご承知のように、原稿は電子メール(添付ファイル)が編集上も一番都合いいです。執筆者には頁数に応じて、3〜15冊程度配布(26号実績)。
締 切 平成23(2011)年10月末
(遅れる方は、返信メールにおよそのページ数、時機ご一報ください)。
発 行 平成23(2011)年12月中旬 発行部数 500部。
合評会 平成24(2012)年2月の祝祭日を予定。
原稿送り先 Eメール gunnkei@w8.dion.ne.jp (各号の奥付にもあります)
今までのsnaganofy@r7.dion.ne.jpも使えます(同じメールボックスに落ちます)。
郵送等 〒136-0072 江東区大島7-28-1-1336 永野悟方 群系の会宛
※毎回、投稿が見込まれる同人の方には、投稿の予定のアンケートメールを発信しています(一部はがき)。なるべくご返信ください。
(毎度のことですが、書かれた内容に後、変更・取りやめ・追加等があってもかまいません。あくまで全体の傾向を知るためですので、ご返信いただけると幸いです)。
「群系掲示板」等でご案内のように、作品やテーマの参考のために、
このたび刊行された集英社刊行の「コレクション 戦争と文学」20巻の
内容を参考として、同人に提示しています。
(「掲示板」の2/4、2/6・7分をご参照ください)。