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「群系」33号 特集《昭和戦前・戦中の文学》 アピール文



                         2014.5.11.編集部(原稿締切5月末)


 昭和というと、激動の時代、戦争と戦後の転変などがいわれたりする。むろん政治的・社会的にはその通りなのだが、時代の表層(現実)の裏にあったもの、いわば空気・人々の心のうちをこそ考えるのが文学、あるいはその研究の役割ではないだろうか。

 確かに、過ぐる戦争はかつてないものだった。満州事変から支那事変・大東亜戦争(当時の呼称)にいたる戦争は、この国にとって未曾有の転変であった。小誌は、前にそのことをとらえて、二度の特集を編んだ。「戦争と文学-昭和文学の水脈」(27号・2011年夏)、また東日本大震災を受けた「震災と文学」(28号・2011年冬)である。

 戦争文学、というジャンルがきちんと確立されているかわからないが、そういう戦争、作家・詩人がとらえた戦争を追求していったのが先の特集であったとするなら、今回はどうしてそのような戦争に至ったのか、人々の意識、時代の空気を読み取っていこうとするのが、33号の狙いといえる。

 大正から昭和にかけて、社会や文学にも大きな影響を与えたプロレタリア文学が昭和8年、多喜二の虐殺、佐野・鍋山ら共産党幹部の獄中の転向によって、党中央の壊滅、運動の停滞という事態に至った。昭和10年代の文学、欧米に対応する、「東亜」「日本」というテーマがせり出すようになった。顕著な動向としては、「日本浪漫派」の活動と昭和17年「文学界」で展開された(近代の超克)の座談会とその関係論文、がある。

 昭和8年に発刊された「文学界」は、左翼の退潮を受けて、(文芸復興)といわれた。何が復興したのか。所詮はプロ文学ならぬもの、すなわち芸術派、旧大家の復活を意味するのが文学史の見方だが、ここでもっと重要なのは、明治の文明開化の合理主義が一度猜疑の目で省みられ、さらに「日本」とか、「アジア」という、新しい視座が導入されたことである。考えてみると、浪漫主義や自然主義、白樺派に至るまで、近代文学は、泰西に文化・文明を移植・導入することに余念がなかった。そこで、あらためて、東西文明のありように目を見開かすことになったのは、それ自体一つのいい機会であった。だが、脚下照顧、真の伝統や祖国を見出すなら、いい。が実際にはそこには、大東亜共栄圏という政治に跼蹐した卑屈な文章、あるいは逆に異様に浮ついた復古主義、国家主義が言われなかっただろうか。

 単に首魁・保田與重郎の一人責任に負わせるものではない。小林秀雄や、萩原朔太郎(「日本への回帰」ほか)の、宿命観、虚無意識まで、この国の、あるいは人類社会の(近代)のはたて、あるいは類型として、そのありようを考えてみたいのである。

 これら文学者は、編集部など同人が長く追求してみたかったことである。だが、歴史の誤解、文学の誤読、さらに大いなる時代の雰囲気がなかなかそういう一瞥を拒んできたようにもおもわれる。

 小誌では迷妄、虚妄を見据え、同人の総力をもって、今につづくこの国の状況をつかんでみみたいと思う。各位の協力を節に願う次第である。 

                           2014.5.11.記  永野悟 



 【参考文献】

   (工事中)




*「群系」33号(締切 平成26年4月 7月刊)の特集は〈昭和戦前・戦中〉

*「群系」34号(締切 平成26年9月 12月刊)の特集は〈昭和戦後〉の予定です。

* 「群系」35号(締切 平成27年4月 7月刊)の特集は(芥川賞この十年 その2)(予定)


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「群系」次号(33号)原稿募集要項


 [お知らせとお願い]

−掲載料の改定について、最下段に説明があります。


原稿種類  評論・研究、創作・小品、エッセイ、詩(短歌・俳句は除く)、コラム(1ページ。半ページ囲み)など。音楽論・絵画論、評伝、メディア論、漫画論なども歓迎。複数投稿可(3部まで)。 

枚 数   基本的には自由

 (1ページは25字詰め×23行×2段=1,150字)。

 1ページ目にはタイトル分25字×8行×2段=400字(1頁物などは、25字×5行×1段=125字)が入ります。それを除いて計算ください。

 なお,《読書ノート》《音楽ノート》《映画ノート》(各1〜2頁)や、政治的・社会的テーマのコラムも募集(1〜4ページ)。気楽に投稿ください。

 締切 5月31日(土曜)  

 遅れる方はご連絡ください。多少の猶予はあります。

 提出先  群系編集部

    → snaganofy@siren.ocn.ne.jp

      (ご投稿予定の方は一度ご通信ください)

 掲載料(今回改定 最下段参照)

       Word添付で、3,300円/1p  

       手書きは3,800円/1p

 配布冊数 掲載ページ+2冊(原則)

 発行  2014年7月中〜下旬

 合評会 2014年9月の日曜日を予定

 特集企画 

  特集「昭和戦前・戦中の文学」

 31号「明治の文学」、32号「大正の文学」につづくもので、

 その次、34号「昭和戦後の文学」と一環をなすものです。

      (左のアピール文、参照ください)

 発送先 群系同人(会員)ほか、研究者・関係各位

      図書館・マスコミ他  


[お知らせとお願い]

 既に同人の皆様には平成26年4月からの消費税値上げ(8%)についてはお知らせしましたが、小誌掲載料を1ページ当たり300円の値上げをさせていただくことになりました。

 小誌は昭和六二年(1987年)の創刊以来、一度版元より用紙代などの件で、2,800円/1ページを3,000円にさせていただきましたが(Word添付の場合)、それ以来およせ二十年この値段でやってきました。

 印刷製本費用の増大も、会員数の増加(会費)となによりも皆様のカンパなどで、編集部の持ち出しがないようにやってきましたが、このたびはきちんと消費税分を経費に織り込むことで財政の円滑化をはかりたいと思います。

 1ページあたり300円のご負担増で、

Word添付の場合 3,000円 →3,300円、

手書きなどの場合 3,500円 →3,500円

となります。来年の10%消費税値上げもふくんだ数字です。

 いろいろとご出費が重なる折、恐縮ですがよろしくご理解と語協力を願いいたします。

                   群系編集部