『群系』 (文芸誌)ホームページ
「群系」31号(4月末原稿締切・7月刊行予定)
特集アピール
「明治文学」について
2013年2月4日
昨年(2012年)暮れに第30号を刊行し、その記念のパーティーも終えて、はた次からは何をやろう、と同人らと話し合っている中で、21世紀の文学、とか、文学と政治、若者と文学などのテーマがいろいろあがりましたが、結局は、過去に文字になったものに依拠するしかないだろうということで、改めてこの近代、明治・大正・昭和(前期・後期)の文学作品を読んでいこうということになり、この2年ほどをそれらの特集をすることになりました。
前の「百年の文学」のシリーズでやった漱石のこと、さらに「大逆事件」、「戦争と文学」、さらに「震災・戦争と文学」は、それぞれその時代の状況に迫り考えさせられ、心に残りました。なぜ、大震災と朝鮮人・社会主義者虐殺が表裏して起こったのか、なぜあんなに広大な地域に及ぶ戦争になったのか、そして戦後の持続の中で、期せずして、起こった3・11の大震災は、いま、あるいはこれからの日本人に何を問うているのか、より問題意識をもたされ、いろいろ考えていきたく思うようになりました。
予定としては、明治の文学(31号)、大正の文学(32号)、
昭和前期の文学(33号)、昭和後期の文学(33号)、
31号(2013年前期号)は4月末締切、7月刊行、9月合評会、
32号(2013年後期号)は9月末締切、12月刊行、翌年2月合評会、
となります。
「明治期の文学」のポイントの一つは国家の立ち上げ、とその中での人々、ということでしょうか。富国強兵殖産興業≠フ国家側のスローガンと、立身出世≠ニいう人の側のスローガンが、うまく並行しえていたのか。確かに日清・日露二度の戦争を経て、富国強兵は成し遂げつつあったけれど、人民は貧困のままとりのこされたのでは。後のプロレタリア文学と比較して、この頃の貧困に文学者たちは、どのような活動をしていたのか、具体的にみていきたいと思います。
樋口一葉「にごりえ」をはじめ、鏡花「夜行巡査」(観念小説)、広津柳浪「今戸心中」(深刻小説)、国木田独歩の「窮死」など、後の現実暴露のさきがけとなった作品は、作家を浪漫主義から自然主義へと目を向けさせます。また、「最暗黒の東京」(松原岩五郎)などは、小説とはまた違った方法で(ルポルタージュ)、首都の隅を照らしています。
また「明治期」というのは、文明開化によって、あらゆる文物・制度がいっせいに流れ込んできたこともあり、軍隊制度、学校組織、鉄道(施設)、工場と労働者のありよう、そして新聞・出版等の表現媒体、の動向もみておきたいですね。例えば、軍隊と鉄道は連環があるのか、鉄道や道路と都市の発展はどうだったのか(水道やガス・電気の発達の状況は)、というインフラ部分も基礎としてみておきたいですね。(それらが、関東大震災で灰燼に帰し、またそこからの復興計画で、亭とはどのように変わったのか、近代都市≠ノなったのか)。
また、文学と密接な関連だった新聞社や出版社、特に、博文館や春陽堂の果たした役割、「新小説」と「文章倶楽部」、あるいは「太陽」といった雑誌の違い、「万朝報」と黒岩涙香の変遷、さらに独歩が刊行し出した「近事画報」の戦時の報道の役割、さらに同誌の女性版として出た「婦人画報」の意義、など、明治期の出版報道を見ていくことも、「近代」の基礎を学ぶことでありましょう。作品から、これらを浮き彫りにできると、時代が生き生きと見えてきますね。
どうぞ、皆さんが思う「明治」という時代、またその「文学」について、いろいろ描いてみてください(まず、「掲示板」にいろいろ書いて、啓発し合いましょう)。
永野悟 ^_^;

【資料】 ぜひ一とおりお目通りを。(「映画」特集については左サイト下にあります)
31号 特集T 〈明治期の文学〉
-国家と人々のあいだにあって-
31号 特集 U 映画 〜もう一つの生〜
「群系」31号原稿募集要項
(2013年前期号)
31号原稿募集要項
掲載料金、配布冊数など、基本的なところはこの数年変わりません。
〈読書ノート〉など、1pからでも歓迎です。複数投稿は、3部まで。
原稿種類 評論・研究、創作・小品、エッセイ、詩(短歌・俳句
は除く)、コラム(1ページ。半ページ囲み)など。
音楽論・絵画論、評伝、メディア論、漫画論なども
歓迎。複数投稿可(3部まで)。
枚 数 基本的には自由
(1ページは25字詰め×23行×2段=1,150字)。
1ページ目にはタイトル分25字×8行×2段=400字(1頁物
などは、25字×5行×1段=125字)が入ります。それを除い
て計算ください。なお,《読書ノート》《音楽ノート》《映画ノート》
(各1〜2頁くらい)や、政治的・社会的テーマのコラムも募集
(1〜2pくらい)。 気楽に投稿ください。
特集企画
特集T 「明治文学」 (2p以上〜)
特集U 「映画」 (推奨2p〜4p)
特集V 掌編小説 (2〜6p以内)
掲載費
1. 手書きの場合:1ページ3,500円
(コピー原稿を郵送ください。黒猫メールも可)
2. 電子メール添付の場合:1ページ 3,000円(WORDで)。
もしくは短いものなら、「メール板」に直接書き込み、でも可。
執筆者には頁数に応じて、3〜15冊程度配布(26号実績)。
締 切 平成25(2013)年4月末日
遅れる方は返信メールに、ページ数、時機、ご一報下さい。
発 行 平成25(2013)年7月下旬 発行部数 500部。
合評会 平成25(2013)年8〜9月の祝祭日を予定。
原稿送り先 Eメール gunnkei@w8.dion.ne.jp
(各号の奥付にもあります)
今までのsnaganofy@r7.dion.ne.jpも使えます
(同じメールボックスに落ちます)。
郵送等
〒136-0072
江東区大島7-28-1-1336 永野悟方 群系の会宛
※ 原稿募集のご案内メールを発信しています(一部はがき)。
予定がついた時点で、ご返信ください。
毎度のことですが、返信後、変更・取りやめ・追加等があってもかま
いません。あくまで全体の傾向を知るためですので。
特集U 「映画」について
第一特集以外に、その号に応じて、第二特集などを組んでいく
予定です。 このたびの31号は、「明治文学」が第一特集で、第
二特集は、「映画」についてのエッセイ、です。 こちらは、邦画・
洋画をとわず思い出の映画について自由に書きます。
特集Tの「明治文学」とは関係ありませんが、明治期の文学
作品が、後に映画化された場合、両者の比較をしてみるのもお
もしろいでしょう(特に、泉鏡花の作品は後に何度も映像化され
ているようです)。
主な邦画作品には、次のようなものがあります。
映画名 監督 主演 時間 制作年
青い山脈 今井正 原節子 170分 1949
雨月物語 溝口健二 京マチ子 96分 1953
地獄門 衣笠貞之助 長谷川一夫 京マチ子 88分 1953
祇園囃子 溝口健二 木暮実千代 若尾文子 81分 1953
西鶴一代女 溝口健二 田中絹代 三船敏郎 136分 1952
お遊さま 溝口健二 田中絹代 乙羽信子 89分 1951
武蔵野夫人 溝口健二 田中絹代 森雅之 84分 1951
雪夫人絵図 溝口健二 山村聡 浦辺粂子 85分 1950
かげろう怪盗伝 仁科熊彦 大谷日出夫 54分 1 933
東京物語 小津安二郎 笠智衆 東山千栄子 136分 1953
麦秋 小津安二郎 原節子 笠智衆 淡島千影 124分 1951
晩春 小津安二郎 笠智衆 原節子 月丘夢路 108分 1949
父ありき 小津安二郎 笠智衆 佐野周二 94分 1942
風の中の雌鶏 小津安二郎 佐野周二 田中絹代 84分 1948
一人息子 小津安二郎 飯田蝶子 日守新一 87分 1936
戸田家の兄妹 小津安二郎 藤野秀夫 葛城文子 106分
1941
お茶漬けの味 小津安二郎 佐分利信 木暮実千代 115分
1952
長屋紳士録 小津安二郎 飯田蝶子 小沢栄太郎 72分
1947
【追記】 2013.3.11.
31号 特集 U
映画 〜もう一つの生〜
特集V 掌編小説
これはあえて、特集とは表記しないかもしれませんが、同人の創作欲をかきたてようということで、編集部が提案するものです。すなわち、長くない、2〜4p程度の作品からまず書いてみませんか。