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「群系」35号 特集 《昭和戦後の文学》その2 アピール文
2015.7.28記
特集アピール文
「群系」35号の特集は前号につづいて、《昭和戦後の文学》ですが、その2として、おもに昭和30〜50年ごろの作家・作品を扱います。(また、第U特集として、「戦後の日本映画」も原稿募集します。映画は戦後隆盛を迎え、文学作品と併行した作品も多く、いわゆる〈昭和戦後〉の原風景を作っていきました-このアピールは後に)。
石原慎太郎の「太陽の季節」(昭和30年7月。下半期芥川賞)で始まったこの時期の文学は、折からの高度成長・技術革新、その裏腹の公害問題、学生運動もからんで、かつてない隆盛を迎えました。テレビの普及、週刊誌の創刊、それに伴う連載小説、それまでの純文学・大衆小説という区分け以外の中間小説、推理小説、SFなども生みました。また、文芸雑誌や論壇誌なども多く刊行されたのも特徴的です。
でも、いわゆる文学流派として特筆すべきなのは、昭和40年代に登場してきた、いわゆる〈内向の世代*〉と呼ばれる作家たちでしょう。彼らは世代的には先行した石原、大江健三郎、開高健などと重なるのですが、皆とりあえず会社員など組織の一員となっていました。大江などが戦後文学の後継者を自認するのとちがって、やはり内部に屈託するものがあったようです。それを彼らは文体をふくめ、いろいろな方法で表現していきました。ただ、やはり先発の学生作家などに比べると地味で、いまひとつ受け入れがよくなかったようです。批評家にしても、川村二郎や秋山駿などの〈内向の世代〉の評者は、江藤淳のような華々しさはなかったようです。
でも、「最後の純文学」ともよばれる彼らこそ、本当の意味で「戦後の作家」(柄谷行人)といわれるように、戦後の空間を表現した人たちでしょう。これらの作家たちが何を書き、どのように表現したかをいまこそ検証し、逆に80年代以降のこの国のある種面妖な状況のもとを考究してみたいとおもいます。
とりあえず、いま現在分担が内定されている作家をあげておきますね。
小川国夫、日野啓三、大庭みな子、後藤明生、黒井千次、
阿部昭、坂上弘、古井由吉、古山高麗雄 7月28日現在
(以上はいわゆる〈内向の世代〉といわれる作家たちですね)。
その他、あると望ましい作家として高井有一、批評家として、先の川村二郎や秋山駿なども取り上げたいとおもいます。また必ずしも〈内向の世代〉と目されない作家たちも、〈同世代作家〉として、特集に組み入れたいとおもいます。以下の作家・批評家たちが推奨されます。(編集部推奨)
菊村到 辻邦生 石牟礼道子 吉村昭 原田康子 田久保英夫
田辺聖子 色川武大 三枝和子 竹西寛子 加賀乙彦 林京子
野坂昭如 磯田光一 三浦哲郎 三浦綾子 高橋和己 高橋たか子
小田実 柏原兵三 柴田翔 李恢成 富岡多恵子 倉橋由美子
寺山修司 野呂邦暢 立花隆 松原新一 柄谷行人
特に時代の画期をなしたとおもわれる、高橋和己(「悲の器」など)、小田実(「何でも見てやろう」など)、柴田翔(「されどわれらが日々─」)、李恢成(「砧をうつ女」)、倉橋由美子(「パルタイ」など)、三浦綾子(「氷点」)、寺山修司(歌集「田園に死す」)、野坂昭如(「火垂るの墓」)などは、ぜひ取り入れたいものです(作品は一例)。特集対象の作家一覧は、この下にありますのでご参照ください。また、この時期の芥川賞を右サイトに掲出しました。〈内向の世代〉の作家は必ずしも受賞しているわけではないようです(そんなのふつう。後の村上春樹も島田雅彦なども受賞していない)。案外、受賞作なしというのが多いのが目立ちます。
なお、分量は2p以上からで、2-4p程度の作品案内、5p以上の作家・作品論、さらには、10p以上のものは歓迎です。一応中心的な作品は昭和30〜50年頃までに発表されたものが望ましいですが、〈内向の世代〉の作家はそれ以降も活躍しており、後の作品を取り上げるのも自由です。
むろん、これ以外の論稿も自由論考として歓迎です。本誌恒例の《ノート》類(1p)も《読書ノート》《都市ノート》など、募集です。創作の方は現在4〜5人の予定がありますが、ページ数をそのうちお知らせください。
原稿締切は8月末(第一期)、9月末(第二期)となっております。校正刷送付など、手順のため、早めに送れる方はよろしく。第二期といって、9月30日に一斉に送るのではなく、適宜メール添付ください(順繰りができます)。送付先は、
snaganofy@siren.ocn.ne.jp、です。(Wordの添付で)
発行は10月〜11月、合評会は、12月の日曜などを予定しています。
【作家たち】
「群系」35号特集《昭和戦後の文学その2》の対象作家例
昭和30〜50年頃に活躍した作家たちをその生年ごとにあげておきます。むろんここにある以外の作家・詩人・批評家でも、作品がこの時期にあれば特集にはいります。主な作家たちはいわゆる〈内向の世代〉ですが、広く〈高度成長下〉の作品は対象です。
生年 作家名 出典 日本近代文学年表 小田切進編小学館
大正 9年生 安岡章太郎 古山高麗雄 鮎川信夫 阿川弘之
大正10年生 庄野潤三 藤原審爾 五味康祐 山本七平
大正11年生 橋川文三 服部達 佐伯彰一 紅野敏郎 鶴見俊輔 清岡卓行
大正12年生 吉田 満 田村隆一 遠藤周作 上田三四二 司馬遼太郎
大正13年生 黒岩重吾 安部公房 吉行淳之介 山崎豊子吉本隆明
大正14年生 中野孝次 三島由紀夫 梅原 猛 菊村 到 丸谷才一 辻邦生
大正15年生 立原正秋 黒田喜夫 河野多恵子 奥野健男 山口瞳 井上光晴
昭和 2年生 石牟礼道子 吉村昭 北杜夫 小川国夫 藤澤周平
昭和 3年生 原田康子 田久保英夫 川村二郎 田辺聖子 尾崎秀樹
昭和 4年生 色川武大 三枝和子 竹西寛子 加賀乙彦 日野啓三 向田邦子
昭和 5年生 饗庭孝男 秋山駿 林京子 野坂昭如 開高健 大庭みな子
昭和 6年生 磯田光一 有吉佐和子三浦哲郎 前田愛 高橋和己 曾野綾子
昭和 7年生 後藤明生 高井有一 黒井千次 石原慎太郎 小田実
昭和 8年生 森村誠一 藤本義一渡辺淳一 半村良 柏原兵三 江藤淳
昭和 9年生 山崎正和 宇野鴻一郎 阿部昭 筒井康隆 井上ひさし
昭和10年生 柴田翔 大江健三郎 李恢成 富岡多恵子 倉橋由美子
昭和11年生 寺山修司 坂上弘 天沢退二郎 加藤幸子 山本道子
昭和12年生 亀井秀雄 尾辻克彦 佐木隆三 庄司薫 野呂邦暢 古井由吉
昭和13年生 清水哲郎 東峰夫 佐々木幸綱
昭和14年生 吉増剛造 岸上大作 吉行理恵 木崎さと子
昭和15年生 唐十郎 村松友視 志茂田景樹 立花隆 松原新一
昭和16年生 川西政明 柄谷行人
特に時代の画期となった作家たちはぜひ取り上げたいですね。
「群系掲示板」7月24日投稿にもあるように、高橋和己、柴田翔、倉橋由美子、小田実、寺山修司、野坂昭如などは、作品案内2p見開きでもいいのでどなたか、よろしく。
批評家も川村二郎、秋山駿をはじめ、同世代作家の磯田光一、入江隆則、松原新一、少し年上ですが、自殺してしまった服部達など、やはり2〜4pでご紹介いただくと、特集にふくらみができます。(先日亡くなった鶴見俊輔などもお取り上げいただくといいですね)。
*先日(22日・水曜)の編集会議では、上の作家中、いわゆる第三の新人は除外しようということになりました。また、大江健三郎や石原慎太郎などは、この世代の旗手、トップランナーなのですが、〈内向の世代〉中心となれば、焦点がぼやける、ということで、やはり除外になりました。(大江などは、別途特集になりうる)。
中上健次や村上龍、村上春樹など、戦後作家は昭和50年以降がおもな活躍となりますので、今回やはり除外です。(次号以降の検討対象)。
ところで、これら作家たちにたいしてどういう批評・解説があるのか、下に参考文献をあげておきました。 以降も徐々に追加予定です。 2015.7.27.記
特集資料の紹介
【雑誌特集〈内向の世代〉】
【全集案内】
いわゆる〈内向の世代〉の作家を網羅した当時の全集。国会図書館資料検索より。
最も普及されているとおもわれる戦後の文学の作家別全集。こちらは収録作品
の紹介もされています。また巻末に作家論が付いています。
【研究書案内】
amazonなどで検索すると出てきます。
「群系」次号(35号)原稿募集要項
2015.7.13記
原稿種類 評論・研究、創作・小品、エッセイ、詩(短歌・俳句は除く)、コラム(1ページ。半ページ囲み)など。音楽論・絵画論、評伝、メディア論、漫画論なども歓迎。複数投稿可(3部まで)。
枚 数 基本的には自由
(1ページは25字詰め×23行×2段=1,150字)。
1ページ目にはタイトル分25字×8行×2段=400字(1頁物などは、25字×5行×1段=125字)が入ります。それを除いて計算ください。
なお,《読書ノート》《音楽ノート》《映画ノート》(各1〜2頁)や、政治的・社会的テーマのコラムも募集(1〜4ページ)。気楽に投稿ください。
締切 2015年8月31日(第一陣締切)
同 9月30日(第二陣締切)
長い原稿や、校正を丁寧に見たい方はできるだけ8月
末までに送ってください(遅れて9月何日でも送付可)。
遅くとも9月末までに送付ください。
二つに分けたのは、編集の手順上のことです。(さらに遅れる場合お問い合わせください。ページ数上、余裕あるかお答えします)
提出先 群系編集部
(ご投稿予定の方は一度ご通信ください)
掲載料 Word(添付)で、3,300円/1p
手書きは3,800円/1p
配布冊数 掲載ページ+2冊(原則)
発行 2015年10月下旬
合評会 2015年12月の日曜日を予定
特集企画 (左のアピールをご参照ください)。
T特集「昭和戦後の文学」その2
U特集「戦後の日本映画」
2p見開きの作品案内が中心です。
31号「明治の文学」、32号「大正の文学」33号「昭和戦前・戦中の文学」、34号「昭和戦後の文学」(その1)につづくもので、今回は昭和戦後の後半(昭和30〜50年頃)までに世の中に出た文学作品を対象にします。おもに、《内向の世代:》が中心とあるとおもいます(同人・読者の方々には、個々に原稿募集のメールをお出しいています-7月初旬)。
35号発送先
群系同人(会員)ほか、図書館・マスコミ他、
研究者・関係各位
なお、編集会議(7/22)でも話題になりましたが、「群系賞」を今回、贈る予定です。30号記念パーティーの際、第一回が贈られましたが、今回もその授賞式を兼ねます(たぶんお二人の予定です)。選考と細かい内容についてはまた近く群系掲示板、本ホームページに掲出します。
【特集参考】
芥川賞受賞作家・作品
034(1955L)石原慎太郎 太陽の季節 文學界
035(1956E)近藤啓太郎 海人舟 文學界
036(1956L)なし なし なし
037(1957E)菊村到 硫黄島 文學界
038(1957L)開高健 裸の王様 文學界
039(1958E)大江健三郎 飼育 文學界
040(1958L)なし なし なし
041(1959E)斯波四郎 山塔 早稲田文学
042(1959L)なし なし なし
043(1960E)北杜夫 夜と霧の隅で 新潮
044(1960L)三浦哲郎 忍ぶ川 新潮
045(1961E)なし なし なし
046(1961L)宇能鴻一郎 鯨神 文學界
047(1962E)川村晃 美談の出発 文学街
048(1962L)なし なし なし
049(1963E)後藤紀一 少年の橋 山形文学
049(1963E)河野多惠子 蟹 文學界
050(1963L)田辺聖子 感傷旅行センチメンタル・ジャーニィ 航路
051(1964E)柴田翔 されどわれらが日々─ 象
052(1964L)なし なし なし
053(1965E)津村節子 玩具 文學界
054(1965L)高井有一 北の河 犀
055(1966E)なし なし なし
056(1966L)丸山健二 夏の流れ 文學界
057(1967E)大城立裕 カクテル・パーティー 新沖縄文学
058(1967L)柏原兵三 徳山道助の帰郷 新潮
059(1968E)丸谷才一 年の残り 文學界
059(1968E)大庭みな子 三匹の蟹 群像
060(1968L)なし なし なし
061(1969E)庄司薫 赤頭巾ちゃん気をつけて 中央公論
061(1969E)田久保英夫 深い河 新潮
062(1969L)清岡卓行 アカシヤの大連 群像
063(1970E)吉田知子 無明長夜 新潮
063(1970E)古山高麗雄 プレオー8の夜明け 文藝
064(1970L)古井由吉 杳子 文藝
065(1971E)なし なし なし
066(1971L)李恢成 砧をうつ女 季刊芸術
066(1971L)東峰夫 オキナワの少年 文學界
067(1972E)畑山博 いつか汽笛を鳴らして 文學界
067(1972E)宮原昭夫 誰かが触った 文藝
068(1972L)山本道子 ベティさんの庭 新潮
068(1972L)郷静子 れくいえむ 文學界
069(1973E)三木卓 鶸 すばる
070(1973L)野呂邦暢 草のつるぎ 文學界
070(1973L)森敦 月山 季刊芸術
071(1974E)なし なし なし
072(1974L)日野啓三 あの夕陽 新潮
072(1974L)阪田寛夫 土の器 文學界
073(1975E)林京子 祭りの場 群像
以上が特集の範囲。
074(1975L)中上健次 岬 文學界
074(1975L)岡松和夫 志賀島 文學界
075(1976E)村上龍 限りなく透明に近いブルー 群像
076(1976L)なし なし なし
077(1977E)三田誠広 僕って何 文藝